2000年以上も前に栽培されていた果実
近頃はとみにフルーツのお菓子化という現象が目につきます。例えば、夏みかん
などもかつては身構えてから取りかかったほどに強烈な酸っぱさを持っていました。
が、それも今では何の抵抗もなく口に入れられるさわやかな甘い果実に変わってい
ます。その他の柑橘類やいちごなども、まるでお菓子のように甘い品種が主役です。
さて、数ある果実にあって、昔から今様のお菓子としての役割を果たしていたもの
も少なくありません。ここに取り上げたライチなどもそんなもののひとつだったといえ
ましょうか。茘枝と綴って「ライチー」、あるいは「ラーチー」と読む。いわれるところの
トロピカルフルーツの一種です。茘枝の字は日本では見かけませんが、「れいし」と
読んでいます。近年、中華料理で食後のデザートによく出されるようになったため、
今ではすっかりおなじみになりました。
原産地は中国で、当地では2000年以上も前に既に人工的に栽培されていたといい
ますから、この果実への思い入れもひとしおのものがあるようです。一説によると、
絶世の美女の誉れ高い楊貴妃が、ことのほか好んだと伝えられています。そんな方
が口にされていたとなると、それだけで、そこはかとなく有難いものに思えてきます。
主なる産地は福建省や広東省等中国の南部地方や台湾で、あとは東南アジア各
地でも作られています。日本でも、わずかですが九州や沖縄で栽培されています。
なお、枝から取るとき、うっかりそのまま引っ張ると、実の切り口が開いたりして傷み
やすいために、たいがいは枝付きのままで売られています。筆者もアジアの南のほう
をよく訪れますが、そのどこででも市場などでおばさんたちが地べたに座ってこれを
商っているのを見かけます。そしてこれを求めては、ホテルの冷蔵庫で冷して口に運
びました。絶対に冷した方が美味。かの楊貴妃もきっとそうしたのではないかと思いま
す。傷みやすいからでしょうか、日本には冷凍で入ってきて、売られるときも冷凍のま
ま。その半溶けを皮をむいて食べるのがまたいい。要するに冷えていればいいわけで
す。
ついでながら、これとよく似たものに龍眼があります。日本式に「りゅうがん」と読ん
でいますが、あちら式ではロンイン。ライチは赤い皮ですが、こちらは茶色っぽいツルッ
とした皮に包まれていて、味も似たような感じです。インドが原産といわれますが、現在
はライチとだいたい同じようなところで栽培されています。
さらにもうひとつ、ランブータンというものがあります。原産はマレー半島の由ですが
、こちらもライチと似たような味のトロピカルフルーツです。ただ見てくれは面白い。
前二者と違って、球状の表面いっぱいにモシャモシャの長いひげのようなものが生え
ていて、まるで海中に生息するイソギンチャクのような形です。
ライチ、ロンイン、ランブータン、三者とも同じような大きさで、食べ方も同様で、味も
香りも食感もよく似ています。それも道理で、実はみな同じムクロジ科。でもなぜ楊貴
妃はこのうちライチだけをひいきにしたのでしょう。尋ねてみたら案外「あら、どれもみ
な大好きよ」だったりして・・・・・・。
ともあれ、そんな楊貴妃に思いを馳せながら、こんなライチのデザートはいかがでしょう。
文献:吉田 菊次郎 編・著 「クリムとドリムの冒険」偉人が愛したスイーツ