果実や洋酒でさまざまなバリエーションが楽しめる
ドイツ生まれのスイーツ
バヴァロワ bavarois とは、軽く泡立てた生クリームと卵黄、砂糖を混ぜて、
ゼラチンで固めた冷静アントルメです。果実や洋酒を変えることでさまざまな
バリエーションをとることができます。もちろんバラを含めたいろいろな香り付
けも楽しめます。
歴史をひもとくと、古くはフロマージュ・バヴァロワと呼ばれていた由。フロマ
ージュとはチーズのことですが、決してチーズ入りのお菓子というわけではな
く、流動上のタネが固まった状態がちょうどチーズのようだとして、そのように
名付けられたのでしょう。
その名から起源を探ると、ドイツのバイエルン地方を英語でバヴァリアと呼ぶ
ことから、どうもそのあたりにあるのではないか、といわれています。そしてそ
の地の富豪の家で活躍していたフランス人の料理人によって作られたとも
・・・・・・。
ところで、これと似た呼称のバヴァロワーズ bavaroise というものがあり、
バヴァロワとしばしば混同されることがあります。
バヴァロワはあくまでも冷やし固めたアントルメで、バヴァロワーズは液状
の飲み物です。ついでながら、これについて触れますと、やはりバヴァリア地
方に始まりを持つもので、17世紀頃に発明されたといわれています。紅茶、
シロップ、牛乳等を混ぜて作ったドリンクで、呼吸疾患に効くとされています。
18世紀の初め頃、バヴァリア王国の王子たちがパリにいて、フォセ・サン・
ジェルマン・デ・プレ(今日のアンシェンヌ・コメディ通り)にあるカフェ・プロコプ
にしばしば通っていました。彼らはクリスタル製の容器に入れたこの飲み物
を注文していましたが、砂糖の代わりにカピレール caprillaire というはこね草
(しだ類)の香りをつけたシロップを入れるのを好んだそうです。それにバヴァ
リア人ということでバヴァロワーズの名が付けられたとのこと。似たような名
ゆえ、日本も含め諸外国でもよく間違えられることもあるようですが、たった
一字の違いでも、まったく異なるものを指すのです。
それはさておき、バラの香り仕立てのバヴァロワを、クレオパトラがホントに
食べたのか。時代考証をするまでもなく、あり得ない話だろうって?それは
それ、何事も美しく考えたいもの。それとまったく同じでなくても、似たような
ものを口にしたかもしれないと思うと、それだけで夢が広がるではありません
か。そう、お菓子は夢なのです。
さて、彼女が好んだといわれるバラですが、最近は食用に栽培されたもの
が出ています。食べておいしいというものでもありませんが、香りもテイスト
のひとつ。クレオパトラを偲び、ひととき身も心もバラの香りに包まれてみてはいかがでしょう。
文献:吉田 菊次郎 編・著 「クリムとドリムの冒険」偉人が愛したスイーツ